僕はカバー
たくさんの物にかけられている
ホコリや汚れから物を守っている
雨風に打たれることもある
何日も、何十日も、何年も、ずーっと、
雨風に打たれることもある
寒くて冷たくて死んでしまいそう
でも逃げる訳にはいかない
僕はカバーだ
歳をとると破れることもある
破れなくても、
ホコリや汚れで体はボロボロになる
この頃になると体はもう麻痺しているけど、
経年劣化した自分を見ると心が張り裂けそうに痛い
涙とはきっとこういう時に出るものなのだろう
でも涙はでない
僕はカバーだ
初めて目を開けた時のことを思い出す
隣には友だちがいて、
その隣にも友だちがいる
僕たちはみんな仲間だ
あたたかい手が僕たちを包み込んで、
まぶしい太陽を見せて驚かせてくれた
あれにはほんとうに驚いた
世界を旅して、
たくさんの匂いをかいで、
たくさんの物にかぶさった
僕はカバーだ
ある朝目が覚めると、
僕の右下のところに穴が空いていた
それを見た人が僕をつかみあげると、
そのままクシャクシャとなんやら揉まれて、
僕はゴミ箱に投げられた
穴があいたらそこからホコリや汚れが入ってくる
穴があいたらホコリや汚れから物を守ることができない
穴があいたら新しいのに取り替えなきゃいけない
僕はカバー
張り裂けたものはもう痛くはなく、
そこからあたたかい温もりがよみがえる
「お疲れさま」
よくわからないけど、
とてもいい気分だ
生きるっていいことだなぁ
僕はカバー
そのことを知っている
今度生まれるとしたら
きっと僕はカバー
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無題
Re:無題