バイトを終え、私はそのまま家に直帰する気が起こらなかった。
なんだか1人になりたかった。
気持ちが意志を持ち、そして、虚しいなと私に語りかけていた。
仕事場のすぐ近くに大きな公園がある。
そこは私が小さい頃よく遊んだ場所。
私たち家族は、昔その辺りに住んでいた。
今、自然に足が向いたのはそこだった。
誰もいない長い道を歩く。
空を見上げる。
窮屈そうに並ぶ木々の間からは大きな大きな鱗雲が、
ブルーのキャンバスの上で紅色の照明を受けている。
少し肌寒い。
ヤマモミジの彩りとメタセコイアの静寂が、
何かを探す私の心に強く焼き付いた。
気がつくと、ドングリの感触が足裏を伝う。
どこを見ても自然が溢れている。
自然の中にいる。
急に寒さが肩にしみ込んできて、私は帰ることにした。
今度は何の疑いも無く、自分の家へと。
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