今日は妙な気持ちで目が覚めた。
昔、めちゃくちゃ好きだった、
自分の限界を超えたところまで頑張ったけど、
けど、結局振り向く事はなかったあの娘。
なぜか夢を見た。
目覚めのボーっとした頭のまましばらく動けずにいた。
何かあったのかな…なんて考えながら窓を開けて外を見やると、
ちょうど目の前にある紫陽花と名も知らぬ樹木の花との間を、
ひとひらの揚羽蝶がヒラヒラと行き交っていた。
揚羽蝶なんて……まともに見たのはいつぶりだろうか。
朝日を乗せてキラキラと瞬く羽。
それを見ていると幸せな気持ちになってくる。
頭もだんだん現実へ戻ってくる。
よし、今日も頑張ろう。
階段を降りながら、不思議とそう思えた。
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朝飯はいつも納豆ご飯と決まっている。
今日も茶碗片手にジャーを開けて白飯をよそう。
朝の匂いだ。
そのとき、とんでもない違和感を察知する。
白飯を乗せたしゃもじの動きが止まる。
そこから少しばかり米がほころび落ちる。
これは……蝉の声じゃないか!
今年一発目の蝉の叫び。
台所の正面にある引き窓、
その遥か彼方から届けられる夏の記憶。
ニンマリと笑う。
今年もどうぞよろしく。
ジャーをぴしゃりと閉めて、
右に納豆、左に茶碗を持ち、
口に箸をくわえた男が歩き出す。
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